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旅立ち──「なぜベルギーへ?」

 出発の日の朝、自宅の窓からの景色をじっと見つめるハンネス(フロリアン・ダーヴィト・フィッツ)。年に1度6人の仲間たちで行く自転車旅行は今日、15回目を迎える。メンバーは最愛の妻キキ(ユリア・コーシッツ)、悪ふざけが大好きな弟のフィン(フォルカー・ブルッフ)、そして近ごろ夫婦関係が微妙なドミ(ヨハネス・アルマイヤー)とマライケ(ヴィクトリア・マイヤー)、さらに自由主義で未だ独身のミヒャエル(ユルゲン・フォーゲル)だ。
 今年の行き先を決めるのはハンネスとキキの番だったが、ベルギーと聞いて不満を漏らす仲間たち。ドイツに暮らす彼らから見たベルギーは、チョコレートと「タンタンの冒険」くらいしか魅力がないと思っている。最初の休憩で、毎年恒例の“課題ゲーム”を始める6人。右隣に座った人に旅行中の課題を出すのだが、内容は実行するまで秘密だ。「マジで?」「笑えるな」と盛り上がる仲間たち。

告白──「一緒に楽しく旅行したあと、最期を見届けるってこと?」

 翌日、ハンネスの兄家族の家に立ち寄り、賑やかに酒を酌み交わしていた時、ドミがハンネスに子供はまだかと訊ねる。それを聞いたハンネスの母親(ハンネローレ・エルスナー)が、突然泣き出してしまう。キキに促され、父親と同じALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し、余命3~5年と宣告されたと打ち明けるハンネス。みんなショックを受けるが、まだその先があった。ベルギーへ行くのは、法的に尊厳死が許されているからだというのだ。
 内緒にされていたことに感情的になる弟のフィン。母は命が尽きるまで生きることを願うが、父の時のように、家族みんなに辛い思いをさせたくないと願うハンネスの気持ちは固まっていた。マライケはキキに「旅をやめさせて」と頼むが、「ハンネスにはみんなとの旅が大切なの。一緒に来てくれる?」と答えるだけだった。

2度目の出発──「楽しい旅行にするぞ。約束するよ」

 翌朝、ハンネスが母の車で出発しようとすると、旅の支度をした仲間たちが現れる。みんな様々な感情を抱えていたが、ハンネスの希望を受け止めたいと思っていたのだ。だが、そこにフィンの姿はなかった。兄と甥っ子に別れを告げ、母とはベルギーで落ち合う約束をし、再び旅立つことに。街を抜け、山道へ入るころ弟のフィンが追いついてくるが、「兄貴は闘わないの?」と感情をぶつける。
 旅を続ける中で、ハンネスが懸命に生きる姿をみて、ぎこちない空気も徐々にうすれ、しだいに笑顔が戻ってくる仲間たち。“女になる!”という課題を実行して、女装したミヒャエルが現れると、ハンネスたちは大きな笑い声に包まれる。  翌朝、知り合ったばかりのザビーネ(ミリアム・シュタイン)を皆に紹介するミヒャエル。実家のあるベルギー国境まで同行すると聞いて仲間たちは呆れるが、ザビーネの無邪気さに救われてもいた。

笑顔の旅──「精一杯生きたいのよ」

 ハンネスの症状は日に日に悪化し、自転車の速度も落ちていく。中止するべきではという心配を吹き飛ばしてくれるのは、楽しかった日々の思い出話だった。キャンプの朝、雨でぬかるんだ泥の中で、昔のように思い切りふざけ合ううちに、ただ一緒にいることが大切だと気づく仲間たち。“課題ゲーム”をクリアするたびに笑いが絶えない、いつものような旅になっていったが、彼らはみんな、その一瞬一瞬を胸に刻もうとしていた。
 遂に国境にたどり着き、6人はザビーネと別れ、ベルギーへと入っていく。

旅の終わり──「君なら─?」

 最後の夜、キャンプファイアを囲みながら、みんなに最期の思いを話すハンネス。初めてキキが本音をぶつけたことから、ハンネスもまた本当の胸の内を語る。
 翌朝、母とベルギーで合流し、約束の医師の家へと向かうハンネスたちだったが…。